Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

山本 緋那子

ベルギー

宝物のような時間

山本 緋那子さん

人文学部 人文学科
留学期間:2024年9月~2025年7月
留学先:カトリック大学ルーヴェン

留学先大学について

KU Leuvenは今年で創立600周年を迎える、ヨーロッパでも屈指の歴史と伝統を誇る大学です。ベルギーの首都ブリュッセルから電車で約20分のルーヴェンという小さく落ち着いた街に位置しています。大学のキャンパスや図書館、食堂などが街のあちこちに点在し、夜には中心のOude Marketに多くの学生らが集まる、ルーヴェンはまさに学生の街です。ベルギーだけでなく世界中から学生を受け入れており、ヨーロッパはもちろん、アジアやアフリカからも多くの留学生が集まります。そのため、多種多様なバックグラウンドを持つ人々と交流し、異なる文化や価値観に触れられる環境が整っています。特に、Pangaeaという留学生を主な対象とした国際交流カフェでは、様々なパーティーやイベントが開催されています。季節に合わせた大規模なイベントから、小さなディスカッション会のようなものまで幅広く企画されているため、イベントスケジュールをこまめにチェックしておくといいと思います。何もないときでも、このカフェには自習している人や、おしゃべりやゲームを楽しんでいる人がいつもいるため、顔を出せば交流の機会が広がるかもしれません。また、その隣にある大学のLearning Centerも私や友人がよく活用した場所です。試験期間には夜12時までこもり、勉強の合間に休憩を兼ねてPangaeaへ、そんな日々を送りました。この時期は授業もなく人に会う機会が減ってしまうのですが、友人と励まし合いながら勉強に集中できる場所があったことは私にとって大きな支えであり、勉強のモチベーション維持だけでなく、心の拠り所にもなっていました。

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学習面について

講義形式・演習形式のいずれの授業も履修していました。講義形式の授業では、当初は全くと言っていいほど教授の英語が聞き取れず苦労しましたが、授業資料の予習や、授業後に録音の聞き直しを重ねることで、次第にその場で理解できることが増えていきました。一方、演習形式の授業では、毎回課される論文の精読や課題作成に多くの時間と労力を要しました。さらに、授業内での発言が評価に直結するため、2時間集中力を切らさずに教授の話についていきつつ、英語で質問に答えたり批判を述べたりすることは容易ではありませんでした。それでも、この経験は英語の四技能すべてを伸ばす大きな助けになったと思います。

試験は、3時間程度のオープンクエスチョン形式によるエッセイ試験や、教授との一対一の口頭試験がありました。こちらでの授業は暗記・理解する量が圧倒されるほど膨大であり、それを限られた時間内にエッセイとして的確にアウトプットすることは想像以上に大変でした。また、試験期間中はLearning Centerが常に混雑しているため、席を確保するには予約サイトとにらめっこする必要があります。

生活について

学内でのコミュニケーションは基本的に英語で、授業も英語開講のものを受けていましたが、一方で街はオランダ語圏に属しているため、日常生活ではオランダ語に囲まれる機会も多くあります。例えばスーパーに行けば、表示も会話もすべてオランダ語。全く未知の言語に囲まれ、理解できず戸惑うことも少なくありませんでした。ときには友人同士がオランダ語で話し始めて、自分はちんぷんかんぷん、なんてことも。そうした日々を通じて、言語の壁や、異なる母語を持つ者同士でのコミュニケーションのあり方について考えさせられることが多くありました。日本に生まれ、日本語に親しみながら育った私にとって、「外国人」として暮らす経験は、自分の既存の価値観を根本から揺さぶり、多くの発見と学びをもたらしてくれる貴重なものとなりました。

留学で得たこと

まず、自分の考えをさらに深める余地を自覚した経験です。留学中は、世界中から来た、バックグラウンドも年代も性別も異なる人々と関わる機会が多くありました。そうした人たちと、政治や差別、歴史といったテーマから、日常生活の些細な出来事に至るまで様々な話を交わす中で、本当に多種多様で興味深い考え方や信念、価値観に触れることができました。同時に、自分がある物事に対して十分に深く考えてこなかったことを痛感させられる場面も少なくありませんでした。日本にいるときには見えてこなかった幅広い意見や視点、立場の存在を知り、それまでの自分の「考える」という行動の浅さや未熟さを自覚出来たことは、今後の私の成長に欠かせない糧となるだろうと確信しています。

次に、挑戦する勇気です。英語が十分に話せずコミュニケーションがとれなかったらどうしようと不安を抱えながらも現地で多くのイベントに参加したり、日本であまり運動をするタイプではなかったのにサッカーに挑戦したり、マスター向けの授業を聴講したりと、さまざまな機会を逃さないよう行動しました。普段あまり話したことのない友人にお出かけに誘われた際も、勇気を出して行ってみました。私はもともと内向的ですし、アクティブなタイプではありません。しかし、「せっかく留学に来ているのだから、迷ったらやってみよう」と、怖じ気づく自分を励ましつつ、時にはむち打ちながら挑戦を続けました。結果として、思いがけない貴重な学びや素敵な出会いに恵まれることが非常に多くありました。不安に屈せず飛び込んでみる、そんな経験を通じて、挑戦に臆することなく一歩踏み出す勇気を身につけることができたと感じています。

最後に、自分と向き合う時間です。留学中は、日々新しいことを目にし、耳にし、体験しました。また、上手くいかないことや自分の不甲斐なさを突き付けられることも多くありました。そのため、自分にとって既存の価値観や方法だけでは対応できず、行き詰まることも少なくありませんでした。そのたびに自分自身と向き合い、話し合った時間は、非常に有意義で濃密なものでした。こうした時間を通じて、自己を客観的に見つめ、内省し、次の行動に活かす力を養えたことは、留学で得た大きな財産だと感じています。

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後輩へのアドバイス

留学は楽しいことばかりではなく、むしろ辛いことや悔しいことに直面する日々の連続かもしれません。けれども、私にとってこの1年間は、これまでの人生で最も充実し、幸せと成長を実感できた時間でした。日本での生活では想像もしなかった困難に直面したからこそ、毎日のように、時には思いもよらない方向から新しい気づきや学びを得て、大きく成長することができたと思います。また、留学を通じて得た学びや友人は、かけがえのない宝物です。海外経験のなかった私は、留学を決断するのに大きな勇気が必要でした。しかし信州大学は、自分の目標に向けて行動しようとする学生に、全力で手を差し伸べ、並走してくれる大学です。このページを見ている方の中にも「興味はあるけれど迷っている」という人がいるかもしれません。ぜひまずは語学や奨学金などの情報を集め、GECにも足を運んで相談してみてください。どうか自分には無理だと可能性を閉ざさず、一歩を踏み出してほしいと思います。

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